少額訴訟債権執行とは?経験者が解説します。
2024/09/24
当事務所は、行政書士事務所であり、少額訴訟や強制執行についてお手伝いすることはできません。
ただし、当事務所の荒川は、自らを当事者として少額訴訟や通常訴訟、財産開示手続、強制執行や少額訴訟債権執行の申立てを自力で行った経験があります。
今回は、少額訴訟債権執行について記載します。
また、コラムでも少額訴訟について記載していますので、そちらもご覧ください。
「石川県で債権回収に悩むなら少額訴訟を活用しよう|荒川行政書士事務所がアドバイス」
1 概要
少額訴訟債権執行とは、強制執行の一つで、主に少額訴訟判決(仮執行宣言付判決を含む)を債務名義として、判決を行った簡易裁判所の裁判所書記官に申し立てる制度です。
通常の強制執行では、相手方の住所地を管轄する地方裁判所に対して強制執行を申し立てますが、少額訴訟債権執行では、判決を行った簡易裁判所が窓口となるのがポイントです。
2 差押債権
少額訴訟が金60万円以下の金銭請求の案件を取り扱う関係で、差し押さえるものは、債務者(被告)が有する金銭ないし第三債務者への金銭支払請求権となります。
具体的には、「預貯金債権」「給与・賃金債権」「賃料債権」「敷金債権」などです。
当然ながら、不動産や動産を差し押さえることはできません。金銭以外を差し押さえる場合は、通常の強制執行の手続をとることになります。
3 手数料
少額訴訟債権執行にかかる手数料は金4,000円で、通常の強制執行の申立てと同額です。これに郵便切手として数千円がかかります。
4 必要な書類(一部)
①少額訴訟債権執行申立書:いわゆる「鑑」で、少額訴訟債権執行を求める旨を記載した書面です。通常、第三債務者に対しては、陳述催告の申立ても行う旨を記載します。
②当事者目録:債務名義に記載されているとおりに当事者を記載します。判決後に住所を移転している場合は、債務名義記載の住所から現住所までの住所の履歴が分かる証明書(住民票写しなど)の添付が必要で、現住所も当事者目録に併記します。また、第三債務者も記載します。
③請求債権目録:債務名義によって、被告に支払いが命じられた金額を記載します。また、執行費用として、申立てに要した手数料(印紙代)や差押命令正本送達費用、資格証明書取得費用、送達証明書申請費用なども併せて請求することができます。ただし、執行文付与申立手数料は請求できません。これは、少額訴訟判決による強制執行では、執行文がそもそも不要となっているからです。
④差押債権目録:何を差し押さえるかを明らかにする書面です。例えば、預貯金であれば、金融機関名と支店名を記載し、当該金融機関を第三債務者とします。この際、当該金融機関の資格証明書(登記簿謄本)が必要です。
これらに加え、債務名義正本、送達証明書が必要です。
5 申立て
これらの書面を作成し、簡易裁判所書記官に対し、少額訴訟債権執行を申し立てます。以降の流れは通常の強制執行と同様です。
先に、第三債務者宛に差押命令が届き、その後に債務者(被告)に対して差押命令が届きます。第三債務者に対しては、陳述催告の申立てをしておくと良いでしょう。
第三債務者へ送達が完了してから、一定期間後に債権の取り立てが可能となります。債権者は、第三債務者から取り立てることで、金銭的な要求を満足させることになります。
ただし、対象口座の残高不足や勤務先を退職していたなどの事情で、失敗することもあります。この場合は、申し立てた手続を取り下げ、再度の差押対象財産の検討のうえ、改めて少額訴訟債権執行ないし通常の強制執行を申し立てることになります。
初めての手続の場合は、書面の作成や準備に苦労しますが、一度やってみると、手続自体は、意外にもさほど難しくはありません。
差し押さえる財産の調査・特定が難しく、手続を成功させる鍵となっています。財産調査については、後日、「財産開示手続」について取り上げます。
少額訴訟債権執行の手続が分かれば、通常の強制執行手続についても理解することができます。
当事務所は、少額訴訟債権執行や強制執行手続に必要な書面を作成することはできませんが、経験した当事者として、手続の概要や流れをお伝えすることは可能です。
何かの参考となれば幸いです。
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